うみのそと のこと

私は割と都会の近くで幼少期を過ごし、青春期にネオンとビルを見上げて働きました。

空はいつもグレーと群青色のグラデーションで、青焼きのピカソの絵みたいな朝と、太陽の光が反射して白く濁った昼を見送っても、ネオンがその合間を縫って、真夜中の漆黒を知ることはありませんでした。唯一わたしが暗闇に出会うのはいつも海辺でした。電車に1時間も揺られれば、そこに海がありました。うん、日本は島国なのです。

海辺で缶ビールを開けて、ぼんやりその先を眺めても、当時の私の目にはただ横に広がる地平線でしかありませんでした。時々右から左から、夜行船が流れていくのを見送るだけ。

2011年、デンマークの海辺で缶ビールを煽りながら、私はあの地平線の先にいるのかもしれないと思いました。海の外側に、まだ世界は続いていて、そのことに、外から眺めて初めて気がつきました。

うみのそと、は私が日本の外側で出会ったことをシェアすることを目的として始まりました。

それはシェアであって、二項対立を促すものではありません。

日本の方がいい でもなければ 海外の方が優れている でもありません。

なぜなら私たちは海でつながっていて、その間に線を引いたのは割と最近で、実はそれはあまり自然の摂理に沿ったものではないみたいだからです。

日本で暮らしていても、海外で暮らしていても大変なことも楽しいこともあります。

ただ、海外で暮らしていると、それを日本語でシェアしたり相談したりするのは簡単ではありません。私だけが抱えている悩みや問題のような気がしてしまうこともあります。現地のネイティブの友達に話しても、なかなか共感してもらえなかったり、糸口が見えないこともあります。わたしも沢山そういう場面を経験してきました。私はそのたびに、デジタルの世界で情報収集をして、なんとか前に進んできました。私の前に、どこかで、だれかが、何とかして頑張ったことをシェアしてくれて、その歴史に助けられてきました。今度はわたしも、うみのそとから、日本の、もしかしたら世界のどこかにいるあなたの小さな助けになれたらと願っています。

だから、上手くいかなかったこともここではシェアしています。

私は語学が得意だから海外に出たのでもなければ、特別な家庭環境でもなく、そして優れた人間でもありません。それでも、いつも一から十まで自分で調べることをツールに人生の旅を続けています。

この、うみのそとが、あなたのユニークな人生の一つのツールになったら嬉しいです。