ベネチアでもヴェネツィアでもいいけど、な観光地を素通りする旅行記―1

ベネチア

陸続きのヨーロッパで暮らし始めてから、違う国に旅行する機会が増えました。
コロナ前、大学在学中は1セメスターに1回は違う国への研修旅行があったり、長期休暇中に思い立ってふらっと一人旅に行ってみたり。そんな中でもまた行きたいなぁと思い出すのがヴェネツィアです。

2019年の6月、ヴェネツィアビエンナーレでアートの年に1週間の研修に行きました。
連日35℃を超える真夏日。水に囲まれているので(水に囲まれてるってドイツ語の表現かも)とにかく湿気が多くて気候的には旅行向きではないものの…それ以上に魅力的な場所でした。

絵が飾ってあった子供部屋

Airbnbで5人が泊まれるアパートを借りました。ファミリー向けで広すぎるダイニングやダブルベットのマスターベットルームに、子供部屋。私は一番小柄だったので、子供部屋。クーラーが入る家でありがたかったです。後にも先にも、ヨーロッパ生活でクーラーを使ったのはヴェネツィアのこの部屋だけでした。同じ気温でも湿気があるかないかで、こんなに違うのか…と驚きました。

物価は思っていたほど高くありませんでした。中心地にも安いスーパーがあって、お惣菜もワインも安くて美味しい。レストランのパスタは唸るほどボーノ!ドイツやオーストリアの人が夏はイタリア!という気持ちがちょっとわかりました。バケーションに持ってこいだし、言語が違うので旅感もあり。

私は終始一人で散歩。新しい街は一人散歩が一番楽しいです。
そんな中でも、特に印象に残っているのが、船で行ったお墓の島。
ヴェネツィアは船が交通手段で、バス停のように船着き場が至る所にありました。お値段は市民で無い場合は結構高い。でも一回は乗ってみたいなと路線図を眺めていたら、お墓の文字が。お墓だけの島があるの?と気になっていて、滞在も後半、今日は一日券を買って、船を楽しもうと思った日に思い切ってお墓の島まで足を延ばしました。

サン・ミケーレ島という言うその島は、本当にお墓だけ。
なんだかラピュタみたいな場所でした。
空には浮いてないけど、天に近い場所。お墓と教会だけがある島。宗派ごとに区域が分かれていて、お墓も多彩で静かな場所でした。何をするでもなく、そこから対岸を眺めていました。

ある命を全うして、棺桶に入ってゴンドラに揺られてここにたどり着く、そういう最後なのかな。
人だけが時間を刻まない島なんだな。ぼんやりとそう思いました。

思い返すと、スウェーデンに行った時も、森の中にある墓地を訪ねました。
「死者は森へ帰る」というスウェーデンの人の信仰から作られたその場所を特集した建築雑誌を東京、深夜のカフェで始発を待ちながら眺めたのを思い出して、ふと一人旅。今度は一人で、海に浮かぶ墓地のベンチに座っていました。「ここは眠るってわかってたらあんまり怖くないね」そんな風に感じて。

暑かったので、理由をつけては、アイスカフェを飲みました。
アイスクリームが入っているタイプから、フローズンまで色々と種類がありましたが、総じてベネチアはコーヒーも美味しかった。何か冷たいものを片手に、また一人散歩を再開して、路上で絵を描いている人のその横で、おこぼれのチョークで遊ぶ子供を冷かして。

そうやって、島の端っこ、ビエンナーレの会場まで足を延ばしていました。

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